6. 世界応用情報社会学会

世界応用情報社会学会は、今日、日本のみならずアジア/アフリカ諸国を中心に世界で研究が進む応用情報社会学の研究者の学会です。応用情報社会学は、情報社会学近代化モデルに基づいて世界各地における情報社会構築を推進するための方法論に関する研究です。

情報社会学と応用情報社会学との関係は、以下の通りです。情報社会学は、情報社会学近代化モデルを始めとする、近代化、情報化等に関する各種のモデルに関する理論的研究を推進します。応用情報社会学は、情報社会学によって研究された各種モデルに基づく世界各地における情報社会構築のための様々な取り組みの進め方を研究するとともに、実際にそれに基づいて様々なプロジェクトを推進します。即ち、情報社会学によって理論的研究が進められた各種モデルを社会で実装する、ということになります。

応用情報社会学は、「情報社会学近代化モデル・テーゼ」によって、今日の世界における情報社会構築の進め方を研究し、また実践を進めるための社会科学です。「情報社会学近代化モデル・テーゼ」とは、以下のものです(内容に関しては、本ウェブサイトの[情報社会学]を御覧ください。)。

「情報社会学近代化モデル・テーゼ」

現在の近代社会の構造
=(国民国家化+統合国家化)+(労働経済化+知能経済化)+情報化

または、

現在の近代社会の構造
=(国家化Ⅱ(成熟)+国家化Ⅲ(出現))+(産業化Ⅰ(成熟)+産業化Ⅱ(出現))+情報化Ⅰ(出現)

応用情報社会学は、この「情報社会学近代化モデル・テーゼ」に基づいて情報社会構築に関する理論的研究を進めるとともに、様々な実践を指揮するための社会科学です。今日までの経緯は、以下のようなものです。

2017年4月に設立された東京都立産業技術大学院大学経営倫理研究所(ERISE)は、アジア/アフリカ諸国の大学/政府関係機関等との間で、毎年度(10月~9月)情報社会構築に関する共通テーマを設定し、連続して共催セミナーを実施しています。2017年度は共通テーマを『Developmental Strategies coping with the Middle Income Traps』に設定し、キルギス、カザフスタン、タイ、ベトナム、カンボジア及びインドネシアにおいて、合計23回実施しました。2018年度は共通テーマを『Disruptive Social Changes on Blockchain』に設定し、ベトナム、インドネシア、イスラエル、ボツワナ、エスワティニ、スーダン、タジキスタン、ウズベキスタン、ラオス及びキルギスとの間で、合計44回実施しました。2019年度は共通テーマを『An Advanced Methodology of Informatized Society Building』に設定し、インドネシア、ラオス、カンボジア、ウズベキスタン及びベトナムとの間で、合計9回実施しました。

これらの数多くの共催セミナーにおいて、アジア/アフリカ側からは、情報社会学の理論的研究からは独立して、「情報社会学近代化モデル・テーゼ」を基盤にしてアジア/アフリカ諸国における情報社会構築の推進のための特別な社会科学の構築について、強い要望が出されました。これらの要望に基づき、共催セミナーを実施したアジア/アフリカ諸国の大学/政府関係機関等との協議の結果、応用情報社会学の前身である情報社会構築学の研究者による世界的な連携の拠点として、世界情報社会構築学研究者協会(Global Association of Informatized Society Building Researchers : G-AIR)が2019年11月に設立され、事務局はERISEに置かれました。

2020年度に入ると、世界の研究者における「情報社会学近代化モデル・テーゼ」に依拠する情報社会構築の取り組みは一層の広がりを見せて、シビル法制度整備を中心に研究を進めてきた情報社会構築学の範囲を超えて、新しい段階を迎えるに至りました。

このような動きを踏まえて、2021年春、情報社会構築学を含め、「情報社会学近代化モデル・テーゼ」に依拠する多くの研究者及び実践者を包括的に束ねるプラットフォームとして、応用情報社会学が開始され、従来よりERISEとの共催セミナーを実施してきたアジア/アフリカの大学/政府関係機関等を中心にした国際学会としての世界応用情報社会学会が設立されることとなりました。ERISEは、世界応用情報社会学会の事務局を担当します。

世界応用情報社会学会会長・公文俊平
(写真は東京都立産業技術大学院大学情報社会学集中講義(東京都立産業技術大学院大学(東京)、2016年7月9日)
Prof. Mitsuhiro Maeda, Vice President of Glo-SAI
世界応用情報社会学会副会長・前田充浩
(写真はキルギス共和国大統領府主催キルギス官民円卓会議における特別講演、イシククル(キルギス)、2019年9月20日)
Dr. Jun Murai, Vice-President of Glo-SAI
世界応用情報社会学会副会長・村井淳
(写真はERISE=ERIA(Economic Research Institute for ASEAN and East Asia)共催セミナー『The Strategic Perspective of New City Management for ASEAN』基調講演、ジャカルタ、2018年12月3日)