情報社会学近代化モデル

 情報社会学の根幹を成すのが、公文俊平によって提示され、爾後多くの研究がその枠組みに則って研究を進めているのが情報社会学近代化モデルです。これは、近代の歴史を、国家化(政治の動き)、産業化(経済の動き)及び情報化(ソーシャルの動き)の3つの動きの重畳で捉えるとともに、それぞれの動きが時間の経過とともに変化していくことにより、社会全体の態様が大きく変化していくことを捉えたモデルです。

 変化は、出現局面、突破局面及び成熟局面のプロセスを辿ります。細かくなりますが、大事なところですので、きちんと説明します。

 国家化は、概ね16世紀半ばに開始されました。16世紀半ばから18世紀半ばの期間においては、主権国家という形態が趨勢でした(国家化Ⅰ)。18世紀半ばから20世紀半ばの期間においては、国民国家という形態が趨勢でした(国家化Ⅱ)。20世紀半ばからは、統合国家という形態が重要性を高めています(国家化Ⅲ)。このため国家化に関する今日の状況は、国家化Ⅱ(国民国家化)の成熟局面と国家化Ⅲ(統合国家化)の出現局面との重畳として捉えることができます。数の上でも実効性の上でも国民国家が引き続き趨勢を占めてはいるものの、世界システムを見渡すならば、国民国家だけではなく、統合国家という新しいポリティの動きも無視できない重要性を持つようになりつつあり、しかもその重要性は日々高まっていく、ということです。

 産業化については、概ね18世紀半ばに開始されました。18世紀半ばから20世紀半ばにかけての期間は、労働産業化という形態が趨勢でした(産業化Ⅰ)。20世紀半ばからは、知能産業化という形態が重要性を高めています(産業化Ⅱ)。 このため産業化に関する今日の状況は、産業化Ⅰ(労働産業化)の成熟局面と産業化Ⅱ(知能産業化)の出現局面との重畳として捉えることができます。即ち、数の上でも実効性の上でも労働産業化が引き続き趨勢を占めてはいるものの、世界全体の経済の動きを見渡すならば、労働産業化だけではなく、知能産業化という新しい産業の動きも無視できない重要性を持つようになりつつあり、しかもその重要性は日々高まっていく、ということです。

 情報化については、20世紀半ば以降、社会全体のデジタル化を中核的な内容とする情報化Ⅰが進展しています。なお、国家化及び産業化の動きを当て嵌めると、22世紀半ばからは情報化Ⅱが開始されることになると考えられるものの、当然ながら、今日では確たることは言えません。

 以上のことから、21世紀の今日は、成熟局面にある国民国家化と出現局面にある統合国家化の組み合わせ、成熟局面にある労働経済化と出現局面にある知能経済化の組み合わせ、及び情報化の3つの動きの重畳として捉えられることとなります。

 ここが重要なところですので、是非しっかりと頭に入れてください。

現在の近代社会の構造
=(国民国家化+統合国家化)+(労働経済化+知能経済化)+情報化

または、

現在の近代社会の構造
=(国家化Ⅱ(成熟)+国家化Ⅲ(出現))+(産業化Ⅰ(成熟)+産業化Ⅱ(出現))+情報化Ⅰ(出現)

今日
=(国民国家化+統合国家化)+(労働経済化+知能経済化)+情報化

です。これを(近代化の現下の状況に関する)「情報社会学近代化モデル・テーゼ」と呼びます。